新型コロナウイルス感染の世界的パンデミックで、3大感染症のHIV、結核、マラリアによる死者も増えるだろうとの研究結果が出ました。どういうことなのかさっそくみてみましょう。
COVID-19 Ripple Effect May Raise HIV, TB and Malaria Death Tolls
『コロナの波及効果はHIV、結核、マラリアの死者数を増加させる』
今日の英語ニュース
The ripple effects from COVID-19 may substantially raise the death toll from HIV, tuberculosis and malaria, according to a new study.
The pandemic is disrupting services aimed at controlling these three diseases in low- and middle-income countries. Health authorities are concerned it will set back progress against these diseases by years.
COVID-19has already disrupted 85% of HIV programs, 78% of tuberculosis projects and 73% of malaria programs administered by the Global Fund, a $4 billion public-private partnership aimed at fighting these diseases.
Vocabulary
ripple:【rípl】(リップル):さざなみ・小波・波紋・波及
substantially:(ザブステンシャリ):実質上・大体は・大いに
HIV:Human Immunodeficiency Virus(ヒト免疫不全ウイルス)=AIDS(エイズ=後天性免疫不全症候群)の原因ウイルス
tuberculosis:(チュバキュロウシス)=TB:結核(結核菌が原因の感染症)=日本でも毎年約18,000人が新たに結核を発症し、毎年約1,900人が結核で亡くなっている。
malaria:マラリア=熱帯から亜熱帯にいる原虫感染症。高熱や頭痛、吐き気などの症状を呈し亡くなることもある。ハマダラカ(蚊の一種)が媒介する。
disrupt:【dɪsrˈʌpt】(ディスラプト):崩壊させる・破裂させる・中断させる
set back:逆行・(病気の)ぶり返し・停滞
administer:【ədmínɪstɚ】(アドミニスター):【動詞】運営する・管理する
public-private partnership:政府などの公的組織と会社などの私的組織とが協力して進めるプロジェクト。官民共同で進める事業。
the Global Found:世界エイズ・結核・マラリア対策基金・2002年設立・本拠地=スイス・ジョネーブ。
G7を初めとする各国の政府や民間財団、企業などの国際社会から大規模な資金を調達し、低・中所得国が自ら行うエイズ・結核・マラリアの予防、治療、保健システムの強化に資金を提供している。支援の対象は、100以上の国・地域。
by years:数年にわたって
英語ニュースを分解して訳してみましょう
may substantially raise the death toll
from HIV, tuberculosis and malaria, according to a new study.
【英文訳】
新たな研究によると、新型コロナウイルス感染症から広がった影響は、エイズ、結核、マラリアの死亡数をかなり上げるだろうとのこと。
The pandemic is disrupting services
aimed at controlling these three diseases in low- and middle-income countries.
【英文訳】
新型コロナウイルス感染症の大流行は、低中所得国のHIV・結核・マラリアの3つの病気を管理するためのサービスを崩壊させている。
Health authorities are concerned it will set back progress against these diseases by years.
【英文訳】
保健当局は、世界エイズ・結核・マラリア対策基金の3大感染症に対する支援が数年にわたって後退するのではないかと心配している。
新型コロナウイルス感染症の大流行がエイズ・結核・マラリアの死亡を増加させる
新型コロナウイルス大流行で、他の感染症への支援が難しくなる
COVID-19の波及効果(ripple effects)により、HIV、結核、マラリア(malaria) の死亡者数が大幅に増える可能性がある。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、低中所得国でHIV、結核、マラリアから人々を守るために設立された世界エイズ・結核・マラリア対策基金(the Global Found):のサービスを混乱させている。
「これらの国々でCOVID-19の流行による影響全体を最小限に抑える(minimize)には、HIV、結核、マラリアに対するサービスをしっかりと行い、HIV、結核、マラリアの死者を増大させないことだ。」と The Lancet Global Healthに、研究が掲載されている。
例えば、2014-15年の西アフリカでのエボラ出血熱(Ebola)の発生により、エボラ出血熱自体よりもHIV、結核、マラリアによる死亡が増加したことがあった。エボラ出血熱でヘルスケアシステムが混乱に陥ったからである。
COVID-19により、HIVプログラムの85%、結核プロジェクトの78%、マラリアプログラムの73%が資金調達できないでいる。
新型コロナウイルスそれ自体で亡くなる人よりも、その混乱でケアできなくなったHIV、結核、マラリアで亡くなる人のほうが多いとの試算も
Hallettらは、数学的モデルを使用して、COVID-19が医療システムにどのように影響し、HIV、結核、マラリアの患者にどう影響するかを推定した。
COVID-19で医療システムが混乱しHIV患者の抗ウイルス薬(antiviral medications)へのアクセスが妨げられ(interrupt )、今後5年間で死亡数が10%も増えると予測。殺虫剤で処理された蚊帳(かや)(insecticide-treated bed nets)の配布中止でマラリアによる死亡が最大36%増加と推定した。
また、COVID-19によるロックダウンは結核(tuberculosis)を積極的に訪問することができなくなり、放置することにつながり、結核による死亡は、このままだと今後5年間で20%増加との見通し。
一部の国ではCOVID-19の死者数よりも、その混乱で十分にケアできなくなったHIV、結核、マラリアで亡くなる人の人数のほうが多くなる可能性があると、世界基金は報告している。
新型コロナウイルスは、これまでの感染症対策の努力を無駄にする
世界基金によると「HIV、結核、マラリアの影響を強く受けている国では、何年にもわたってやっと得られてきた利益(hard-won gains)をCOVID-19は無駄にする可能性があるとのこと。
世界基金は、COVID-19の影響に対処しながら、3大感染症のプログラムを維持させるには、さらに285億ドルが必要であるとしている。